Katharsis 1
「・・・ハァ、ハァ・・・・」
後ろから大きな足音が追ってくる。途中振り向いて何度もナイフを投げ、確実に当たったのを見たにもかかわらず、
数は一向に減らず、投擲用のナイフも底をついてしまった。
突如、閑静な住宅街に銃声が響き渡る。
その瞬間、左足に激痛を感じ、不覚にも膝をついてしまった。
見ると、踝の少し上を銃弾が穿っていて、止めどなく血が流れていた。
痛みにその端整な顔を歪ませるが、耐えて立ち上がり、再び駆けだした。
それはほんの数秒であったのが、追いつくには十分な時間だった。
あっという間に囲まれてしまう。
敵は思い思いの武器を手にして、彼女に襲いかかる。
しかし彼女は冷静に刀を抜き、前方の敵だけを薙ぎ払って突破口をつくって、再び逃走を開始する。
ひたすら逃げ続け、無我夢中で走った。
マンションの前で立ち止まり、警戒しながら見渡すと、気付けば追手を振り払っていた。
安心感で肩の力が抜けて、ようやく疲労が迫ってきた。
足は重傷のようで、痛みに視界が霞む。遂に足が力を失って、その場に倒れ込んだ。
息が荒くなってくる。雨が降っているようで、体を急速に冷やしていく。
不意に、足音が聞こえてきて、
『敵か・・・!』
咄嗟に刀の柄を握った。
そこで、意識が、途切れた。
2008.09.27
第一話です。まだ主人公の名前は出てきません。
遅えよって感じです、すみませんorz