Katharsis  2

 

 

爆発音、悲鳴、怒号が入り交じって聞こえる。

研究施設であった其処は、既に原型を留めていなかった。

私は一瞬悔やむように振り返り、それから走り出した。

 

が、その瞬間足下を銃弾が抉った。

応戦しようと刀を呼び出し、振り返った刹那、頬を銃弾が掠めた。

痛みと共に、相手を視界に捉えた。

 

銃を撃った彼奴は、かつての仲間だった。

震えながら銃を手にする彼女の表情は悲壮感でいっぱいだった。

 

ex23!戻って!今なら処罰も何もないわ!」

必死に叫ぶ彼女に頭を振った。

「すまない。私は行かねばならない」

「お願いよ、戻って!私たちを置いていかないで!!」

 

彼女は泣いていた。

身勝手だと思う。

自分だけ逃げるなど間違っている。

だが、それ以上に私は行かねばならなかった。

――――あの方の下に、

 

「そなたらを残して申し訳ないと思っている。しかし、いつか、必ず助けに行く」

決して気休めのつもりではなかった。本当に行くつもりだった、

その時までは。

 

彼女を見ると、悲しそうな表情は消え、笑んでいた。

 

「いいえ、行かせないわ。行かせるくらいなら私が殺してあげる」

 

一瞬、彼女が何を言ったのか分からなかった。

刹那、銃弾が肩口に刺さった。

 

しょうがないのか。

 

そう判断し、感情を全てかなぐり捨て、彼女の心臓目掛けて刀を突き刺した。

 

「・・・・かはっ・・」

 

血を吐いて倒れた彼女の顔は、とても安らかだった。

瞬間、捨てたはずの感情が逆流してきて、涙が落ちた。

止まらなくなる前に再び感情を制御し、そこから逃げ出した。

[あの方の下へ、あの方の下へ・・・!!]

そう自分に言い聞かせて涙を止めようとしたが、止まらなかった。

 

 

 

視界がぼやけて見える。

なんとなく顔を触ると涙で濡れていた。

 

状況がどうなっているか分からない。

役に立たない思考をなんとか払いのけ、触覚、聴覚、視覚だけをおいて研ぎ澄ませる。

 

其処は倒れた固いアスファルトの上ではなく、妙に暖かく、柔らかかった。

話し声が聞こえる。どうやら口論しているようだった。

視界が開けてきて、ようやく全体像が掴めた。

 

其処は、あまり広くなく、テーブルに学習机、散らかったCD、ベッドのある生活感のある部屋だった。

私はどうやらそのベッドで寝ているらしかった。

話し声が止み、ドアが開いた。

 

近づいてくる、気配がした。

 

咄嗟の判断でベッドを出て、直ぐさま、入ってきた者を押し倒し、両手を塞いだ。

眼孔を鋭くし、尋問のごとくその者に問いかける。

 

「貴様何者だ。ここはどこだ、答えろっ!」

 

「は・・・・?」

押さえた奴は肩より少し長い銀髪で、藍の瞳をもった男だった。

余りに綺麗な顔をしているために引き込まれそうになる自分を叱責し、再び問いを繰り返す。

 

「答えになっていない!貴様は何者で、ここはどこだと聞いているっ!!」

男はあまりの覇気に驚いていた。

「落ち着いて。俺は柊朔夜。ここは俺の家。君が倒れていたのを見つけて運んだんだ」

 

「は・・・・?」

予想外の答えに呆けてしまう、

ここは敵中で、私は捕まっているのではなかったのか。

しかし、柊は友好的で、何より必死に現状を説明しようとしている。

決して嘘を吐いているようには見えなかった。

 

「信じて、もらえないかな・・・?」

自分の間違いに顔が赤くなってしまう。

「すっ・・・すまないっ!!」

 

両手を押さえていた手をパッと放し、柊から離れて土下座の体勢を取る。

 

「私は追われていた故、つい貴方を敵と勘違いしてしまったようだ。

 あろうことか助けて頂いた恩にも気付かず、咄嗟に押さえつけるなど言語道断っ!

 謝って済む問題とは思っておらぬ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ・・!!」

柊はいきなり早口でまくし立てられて困っているようだった。

「ちょっ・・・ちょっと待って、追われてたんだからしょうがないよ、気にしないで」

私はというと、あっさりと許されたことにまた呆けていた。

「はぁ、・・そ、そうか。そなたは優しいな」

 

そんなことないよ、と微笑んで言った彼に何故か顔が赤くなってしまった。



2007.10.5.

第2話です、相変わらず駄文ですいませんorz
やっと主人公の名前出てきました。でも意味分かんないっすね;;
それは後々書いていこうと思っています。